それからしばらく。

春空は一度も起きなかった。

莉麻は肩を動かさないようにしながら、窓の外を眺めていた。

でも、さすがに少しずつ肩が重くなってくる。

……ちょっとだけ、痛いかも。

それでも起こしたくない。

春空は珍しく、本当に気持ちよさそうに眠っている。

莉麻がそっと姿勢を変えようとすると。

春空の手が動いた。

眠ったまま、莉麻の服の袖を軽く掴む。

莉麻「……春空くん?」

返事はない。

ただ、掴んだまま離さない。

莉麻は少しだけ目を丸くして、それから小さく笑った。

莉麻「寝ぼけてるのかな。」

起こさないように、また身体を戻す。

春空の頭が、莉麻の肩へ収まる。

そのまま静かな時間が流れていく。

前方では奈津が二人の様子に気づき、ちらりと振り返った。

そして、その視線の先にいる悠真も。

何も言わず、窓の外を見ていた。

車はラスト公演の場所へ向かって、静かに走り続けていた。