移動の準備が整い、メンバーが順番に楽屋を出ていく。

最後まで残っていた莉麻は、忘れ物がないかもう一度部屋を見回していた。

テーブルの上。

ソファ。

衣装ラック。

全部確認する。

「……大丈夫。」

小さく呟いて振り返った。

その時。

まだ悠真がいた。

壁にもたれながら、水を飲んでいる。

莉麻「悠真くん、まだいたんだ。」

悠真「うん。ちょっと休んでた。」

そう言って笑う。

莉麻は少し心配になり、悠真の顔を見る。

ライブ直後だから当然だけど、まだ頬が赤い。

莉麻「大丈夫?」

悠真「大丈夫。」

すぐに返ってくる。

でも莉麻は少しだけ悠真を見つめた。

莉麻「……本当に?」

悠真は一瞬黙った。

そして、ふっと笑う。

悠真「本当に。今日はちゃんと水飲んだし。」

その言葉に莉麻も笑った。

莉麻「ならよかった。」

そして、悠真の隣を通り過ぎようとした時。

悠真「莉麻ちゃん。」

呼び止められる。

振り返ると、悠真がこちらを見ていた。

悠真「今日。」

少しだけ言葉を探すように間を置く。

悠真「ステージから見えてた。」

莉麻は目を丸くした。

莉麻「……私?」

悠真は頷く。

悠真「うん。袖にいるの。」

少し照れたように笑う。

悠真「なんか、安心した。」

その言葉に胸が小さく鳴る。

莉麻はふわっと笑った。

莉麻「私も。ステージにいる悠真くん見てたら、安心したよ。」

悠真は少しだけ目を細める。

二人の間に、静かな時間が流れた。