静かな廊下に、二人の足音だけが響く。

悠真は何度も足をもつれさせ、そのたびに莉麻が体を支えた。

莉麻「ゆっくりで大丈夫です。」

その優しい声が耳に届くたび、不思議と力が抜けていく。

ぼんやりする。

頭が働かない。

ただ、隣にいる温もりだけはちゃんと分かった。

無意識だった。

悠真の手が、そっと莉麻の服の裾を掴む。

ぎゅっと握るほど強くはない。

離れないように。

安心するものを探すように。

小さく指先が布をつまんでいた。

……あったかい。

このままなら、大丈夫。

そんな気持ちだけが胸に残る。

莉麻は視線を落とした。

服を掴んだその手に気づいても、何も言わなかった。

弱っているから。

きっと無意識なんだ。

そう思うと、その手を振り払うことなんてできなかった。

莉麻「もう少しですよ。」

その言葉に、小さく頷く気配だけが返ってきた。