玄関へ一歩足を踏み入れる。
外の暑さが嘘みたいに涼しかった。
部屋の中は黒を基調にした落ち着いた空間で、きれいに整えられている。
生活感はあるのに、どこか静かで。
悠真らしい。
そんな気がした。
ドアを閉めた瞬間だった。
今まで張っていた糸が切れたように、悠真の体が大きく傾く。
莉麻「悠真くん!」
慌てて抱きとめる。
体重が一気に腕へかかる。
さっきまで何とか立っていたのは、気を張っていただけだったんだ。
悠真は莉麻の肩へ額を預けたまま、小さく息を吐く。
悠真「……ごめん。」
その声は外で聞いたものより、ずっと弱かった。
アイドルの悠真じゃない。
一人の二十一歳の男の子。
そんな姿が、目の前にあった。
……大丈夫。
ここまで来たんだから。
今度は、ちゃんと休ませてあげよう。
そう思いながら、莉麻は悠真の背中へそっと手を添えた。



