最後に事務所へ入ってきたのは悠真だった。

悠真「おはようございます。」

静かな声。

ドアを閉めながら部屋を見渡す。

そしてすぐに莉麻を見つけた。

目が合う。

莉麻はふわっと微笑む。

莉麻「おはよう、悠真くん。」

その笑顔を見るだけで、不思議と気持ちが落ち着く。

悠真も小さく笑った。

悠真「……おはよう。」

そう返して近づいてくる。

すると莉麻は昨日教わったことを思い出し、バッグからペットボトルを一本取り出した。

莉麻「朝、お水飲んできた?」

悠真は少しだけ目を丸くする。

悠真「……忘れた。」

少し気まずそうに笑う。

莉麻は「やっぱり」と小さく笑ってペットボトルを差し出した。

莉麻「まずはこれ飲んで。」

悠真「ありがとう。」

素直に受け取り、すぐキャップを開けて一口飲む。

その様子を少し離れた場所から見ていた奈津は、腕を組みながら静かに笑う。

春空は何気なく莉麻へ近づいていく。

悠真は何も言わないまま莉麻の言葉を素直に聞く。

二人とも、自分ではまだ気づいていない。

けれど、その視線は少しずつ同じ一人へ向かい始めていた。