少し離れた場所から、その様子を見ていた悠真はペットボトルを口元まで運ぶ。
……楽しそう。
春空は誰とでもすぐ仲良くなれる。
だから、ああやって笑わせるのも上手だ。
分かっている。
分かっているのに。
莉麻が春空へ向ける笑顔を見るたび、胸の奥が少しだけざわつく。
なんだろう、この感じ。
自分でも理由が分からない。
その時だった。
莉麻が悠真の方を振り向く。
目が合う。
莉麻「悠真くん。」
小走りで近づいてきた。
莉麻「さっきから何回も首を押さえてますよね。」
悠真は思わず手を止める。
無意識だった。
悠真「え?」
莉麻「レッスン中からずっとです。」
心配そうに覗き込む。
莉麻「痛いんですか?」
その距離の近さに、悠真は少しだけ視線を泳がせた。
悠真「……ちょっと張ってるだけ。」
そう笑って答える。
すると莉麻は安心したように笑うどころか、小さく眉を下げた。
莉麻「『ちょっと』って言う悠真くんは、あんまり信用できません。」
その一言に、その場にいた奈津が思わず吹き出した。
奈津「ははっ。それ、正解。」
陽も大きく頷く。
陽「莉麻ちゃん、もう悠真の扱い分かってるじゃん!」
みんなが笑う中、悠真だけが少し照れたように頭をかいた。
そんな姿を見て、莉麻もつられて笑う。
その笑顔を見つめながら春空は思う。
――やっぱり、この笑顔……好きだな。
まだ小さな感情。
でも、その気持ちは昨日より少しだけ大きくなっていた。



