「あ……秋人……くん……?」
ひなたは息をのんだ。
秋人はひなたの腰と背中をがっしりと腕で支え、まるで羽毛でも受け止めるかのように軽々と彼女を抱きかかえていた。彼の胸元から、石鹸の清潔な香りと、かすかな煙草の香りが入り混じった独特の匂いが漂ってくる。
「脚立の使い方も知らんのか。危ないだろ」
秋人は不機嫌そうに眉をひそめると、ひなたをゆっくりと床に降ろした。
「ご、ごめんなさい! 助けてくれてありがとう……! って、なんで秋人くんがここに……?」
ひなたが胸を押さえながら尋ねると、秋人は気まずそうに顔を背けた。
「……生徒会の仕事だ。図書室の予算申請の確認に来ただけだ」
「そ、そうなんだ……」
本当は違っていた。
秋人は生徒会室で作業をしながら、ひなたが放課後急いで図書室へ向かったのを目撃していた。そして、彼女が「弟のお迎えがある」と言っていたことを思い出していたのだ。要領が悪く、一人で焦って作業をしているのではないかと気になり、理由をつけて図書室へと足を運んだのだった。
秋人はひなたの手から目録のバインダーとバーコードリーダーを奪い取ると、ひなたが苦戦していた最上段の本棚へと手を伸ばした。
背の高い秋人は、脚立すら使わずに最上段の本を軽々と手に取る。ピッ、ピッ、と機械的な音を響かせながら、驚異的なスピードでバーコードを読み取っていく。
「あ、秋人くん!? ダメだよ、これは私の仕事で——」
「手際が悪いお前を見てる方がイライラする。黙って見てろ」
冷たい言い方。だが、その手つきは驚くほど手際が良く、正確だった。秋人は目録の数字を一瞬で暗記し、棚の乱れを次々と直していく。
「すごい…… 秋人くん、頭いいだけじゃなくて手先も器用なんだね」
ひなたが感心したように呟くと、秋人は素っ気なく返した。
「この程度の作業、考えるまでもない。 ……それより、お前は18時に弟を迎えに行くんだろ。こんなところで時間を食っていたら間に合わないんじゃないのか」
秋人の言葉に、ひなたはハッと息をのんだ。
(私のお迎えの時間…… 覚えててくれたんだ……)
秋人は昨日、ひなたが言っていたことをちゃんと覚えていてくれたのだ。口では「イライラする」と言いながら、ひなたが早く帰れるように手伝ってくれている。
ひなたの胸の奥が、ぎゅっと締め付けられるように愛おしさでいっぱいになった。
「秋人くん…… ありがとう!」
「……喋る暇があるなら手を動かせ」
そっぽを向く秋人。だが、彼の耳先がかすかに赤くなっているのを、ひなたは見逃さなかった。
ひなたは息をのんだ。
秋人はひなたの腰と背中をがっしりと腕で支え、まるで羽毛でも受け止めるかのように軽々と彼女を抱きかかえていた。彼の胸元から、石鹸の清潔な香りと、かすかな煙草の香りが入り混じった独特の匂いが漂ってくる。
「脚立の使い方も知らんのか。危ないだろ」
秋人は不機嫌そうに眉をひそめると、ひなたをゆっくりと床に降ろした。
「ご、ごめんなさい! 助けてくれてありがとう……! って、なんで秋人くんがここに……?」
ひなたが胸を押さえながら尋ねると、秋人は気まずそうに顔を背けた。
「……生徒会の仕事だ。図書室の予算申請の確認に来ただけだ」
「そ、そうなんだ……」
本当は違っていた。
秋人は生徒会室で作業をしながら、ひなたが放課後急いで図書室へ向かったのを目撃していた。そして、彼女が「弟のお迎えがある」と言っていたことを思い出していたのだ。要領が悪く、一人で焦って作業をしているのではないかと気になり、理由をつけて図書室へと足を運んだのだった。
秋人はひなたの手から目録のバインダーとバーコードリーダーを奪い取ると、ひなたが苦戦していた最上段の本棚へと手を伸ばした。
背の高い秋人は、脚立すら使わずに最上段の本を軽々と手に取る。ピッ、ピッ、と機械的な音を響かせながら、驚異的なスピードでバーコードを読み取っていく。
「あ、秋人くん!? ダメだよ、これは私の仕事で——」
「手際が悪いお前を見てる方がイライラする。黙って見てろ」
冷たい言い方。だが、その手つきは驚くほど手際が良く、正確だった。秋人は目録の数字を一瞬で暗記し、棚の乱れを次々と直していく。
「すごい…… 秋人くん、頭いいだけじゃなくて手先も器用なんだね」
ひなたが感心したように呟くと、秋人は素っ気なく返した。
「この程度の作業、考えるまでもない。 ……それより、お前は18時に弟を迎えに行くんだろ。こんなところで時間を食っていたら間に合わないんじゃないのか」
秋人の言葉に、ひなたはハッと息をのんだ。
(私のお迎えの時間…… 覚えててくれたんだ……)
秋人は昨日、ひなたが言っていたことをちゃんと覚えていてくれたのだ。口では「イライラする」と言いながら、ひなたが早く帰れるように手伝ってくれている。
ひなたの胸の奥が、ぎゅっと締め付けられるように愛おしさでいっぱいになった。
「秋人くん…… ありがとう!」
「……喋る暇があるなら手を動かせ」
そっぽを向く秋人。だが、彼の耳先がかすかに赤くなっているのを、ひなたは見逃さなかった。



