賢人に助けられたあの夜から、伊奈の生活に少しずつ変化が訪れた。
と言っても、すぐに元の明るい笑顔が戻るわけではない。
学校には相変わらず行けず、自室のベッドでぼんやりと過ごす日が大半だった。
だがある日の放課後、インターホンが鳴って玄関を覗くと、そこには不機嫌そうな顔をした賢人が立っていた。
手には、有名なパン屋の袋がぶら下がっている。
「……なんだ、その顔は。飯食ったのかよ」
「賢人くん……どうして……」
「担任に頼まれたんだよ。『クラスメイトの様子を見てきてくれ』ってな。別に、お前の顔が見たかったわけじゃねえよ」
そう言いながらも、賢人は勝手に上がり込み、伊奈の机の上にパンを置いた。
最初は戸惑っていた伊奈だったが、不器用ながらも毎日顔を出して他愛のない話を置いていく賢人と過ごすうち、閉ざしていた心の扉が少しずつ開いていくのを感じていた。
「……ねえ、賢人くん。私、少しずつだけど、外に出てみようかな」
ある日、伊奈がぽつりと言ったとき、賢人は少しだけ驚いた顔をした後、いつものぶっきらぼうな笑みを浮かべた。
「ああ。やっとその気になったか。付き合ってやるよ、どこでもな」
と言っても、すぐに元の明るい笑顔が戻るわけではない。
学校には相変わらず行けず、自室のベッドでぼんやりと過ごす日が大半だった。
だがある日の放課後、インターホンが鳴って玄関を覗くと、そこには不機嫌そうな顔をした賢人が立っていた。
手には、有名なパン屋の袋がぶら下がっている。
「……なんだ、その顔は。飯食ったのかよ」
「賢人くん……どうして……」
「担任に頼まれたんだよ。『クラスメイトの様子を見てきてくれ』ってな。別に、お前の顔が見たかったわけじゃねえよ」
そう言いながらも、賢人は勝手に上がり込み、伊奈の机の上にパンを置いた。
最初は戸惑っていた伊奈だったが、不器用ながらも毎日顔を出して他愛のない話を置いていく賢人と過ごすうち、閉ざしていた心の扉が少しずつ開いていくのを感じていた。
「……ねえ、賢人くん。私、少しずつだけど、外に出てみようかな」
ある日、伊奈がぽつりと言ったとき、賢人は少しだけ驚いた顔をした後、いつものぶっきらぼうな笑みを浮かべた。
「ああ。やっとその気になったか。付き合ってやるよ、どこでもな」



