冷徹営業トップは私の限界オタクでした


営業部へ移動する間に、他の職員たちが二人をチラチラ見て、
「神崎さんが荷物を持ってる…」
「しかも少し嬉しそうじゃない?」
「あの二人どういう関係?」
聞こえないように話をする。

(見るな。陽菜子さんが減る。)

周囲が自分たちを見ていることに気づき、神崎は笑顔を消し、周囲へ冷たい視線を向けた。
それだけで、こちらを見ていた職員たちは一斉に目をそらした。
神崎は陽菜子を隠すように半歩前へ出た。 まるで陽菜子の番犬かのように。
その冷たい視線が効いたのか、みんなはそそくさと仕事に戻る。

「わざわざ迎えに来てくださったんですね。」
「ありがとうございます。ちくわくん。」

二人きりになった瞬間、陽菜子が小声で言った。
神崎の足が止まる。

「…陽菜子さん。会社でその呼び方は、心臓に悪いです。」

神崎は陽菜子に顔を見せないまま、再び歩き出した。その耳は、隠しようもないほど真っ赤だった。
「やっぱり、会社であだ名は恥ずかしいですよね」
陽菜子はそう解釈し、申し訳なさそうにその後を追った。