夕方、陽菜子が今日の分の領収書をまとめていると、営業部長が申し訳なさそうにデスクへ近づいてきた。
「春宮さん、悪いんだけど、来週の金曜日まで営業部をお願いできないかな。」
「来週の金曜日、までですか?」
「月末も近いし、まだ領収書の不備が多くてね。このまま経理部へ戻ってもらうのは不安なんだ。」
「…わかりました。」
陽菜子が了承した瞬間、隣の席で聞いていた神崎の手がぴたりと止まった。
(来週も陽菜子さんと一緒に働ける……!)
「神崎くんもよろしくね!」
それだけ言い残すと、営業部長は鳴り始めた電話に対応するため、慌ただしく自席へ戻っていった。
「神崎さん、また来週よろしくお願いします。」
陽菜子は深々と頭を下げた。
(来週も毎日会えるなんて、これはもう夢ですか? )
「こ、こちらこそよろしくお願いします。」
神崎も深々と頭を下げた。
向かいのデスクからその様子を見ていた寺内が、吹き出すように顔をそらした。
神崎は気づかないふりをして、さらに深く頭を下げた。

退勤時間になり、陽菜子は荷物をまとめ始めた 。
「今週もお疲れさまでした。神崎さん、週末はゆっくり休んでくださいね。」
陽菜子はそう笑って、営業部を後にした。
神崎はその背中を見送りながら、そっと目の下のクマに触れる。
(今夜こそ、ちゃんと寝よう)
神崎は引き出しを開け、丁寧に伸ばした包装紙をもう一度眺めた。
来週も陽菜子が隣にいる。そう思うだけで、胸が高鳴る。
今夜も眠れそうになかった。
