冷徹営業トップは私の限界オタクでした

営業部担当四日目の金曜日。週末を前にしても、営業部では電話の音が絶えず、社員たちは慌ただしく動き回っていた。
神崎は昨日のランチが夢のように思えて、夜遅くまでなかなか寝付けなかった。

「神崎さん、目の下にクマができてますが、大丈夫ですか?」

神崎の隣のデスクに座る陽菜子は心配そうに神崎を見た。

「大丈夫ですよ!むしろいつもより元気です!」
(陽菜子さんに心配させてしまった……。)

陽菜子はデスクの引き出しを開け、アメを一つ取り出した。

「これ、元気出ますよ。」

神崎の手のひらに、いちごみるくのアメが一つ載せられた。



「あ、ありがとうございます!」
(陽菜子さんからもらった!家宝にします!!)

食べずに引き出しにしまおうとする神崎。

「食べないんですか?」

「…食べさせていただきます。」

ずいぶん丁寧な言い方だと思いながら、陽菜子は小さく笑った。
神崎は包装紙を丁寧に開き、いちごみるくのアメを口へ運んだ。
その後、包装紙のしわを丁寧に伸ばし、デスクの引き出しへしまった。
陽菜子はそれを見て、不思議そうに首をかしげた。

「春宮ちゃん、俺にもちょーだい」

外回りへ出る準備をしていた寺内が、いつの間にか二人の背後に立っていた。

「……寺内さん、図々しいですよ。」

「えー!いいじゃん!」

陽菜子は寺内にもアメをあげた 。
神崎は口の中のアメを噛み砕きそうになり、慌てて奥歯の力を抜いた。

「ふふっ。お二人のこのやり取りを見られるのも、あと少しなんですね。」