結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

(やっぱり、強引な人だな)

 そう思いながらも、不思議と嫌ではない。むしろ胸が高鳴るのを感じながら、透子は彼とともにタラップを上がった。

 しかし、係員の案内で個室に通されて透子は再び困惑する。

「えっと、ここにいていいんですか?」

 室内は落ち着いた色合いで統一され、柔らかな照明がテーブルの上を優しく照らしていた。大きな窓からは夜の海が一望でき、まるで別世界に足を踏み入れたような感覚に包まれる。

「急だから、船の貸し切りにはできなかったが、個室は空いていた」

(時間があったら、船ごと貸し切りにしたってこと?)

 迅の知人がこの船の運航会社の社長だと聞き、透子は思わず額を指先で押さえる。さきほど彼が電話していたのは、この船に乗るための手配だったらしい。

 そもそも、こんな広い個室をふたりで使うなんて贅沢すぎる。

 苦悩する透子を乗せ、船はゆっくりと岸を離れた。窓の外では、港の灯りが水面に長く揺れ、街の夜景が静かに広がっていく。

 隣り合って座るふたりの前には、サンドイッチや小さな前菜が美しく並べられる。そして、迅が頼んだのはノンアルコールのシャンパンだった。

「お酒はいいんですか?」