結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

「付いてた。子どもみたいだな」

 両手にソフトクリームを持ちながら透子は一気に頬が熱くなるのを感じた。

「言ってくれたら、自分で取ったのに……!」

「赤くなってるぞ」

「もう、わざとですね」

「君は反応が面白くてかわいいから、ついね」

 悪びれもせずそう言って、迅は楽しそうに目を細める。からかわれているとわかっているのに、透子の胸はふわりと浮きたつ。

 昨日の仕事の疲れも、石井と会って重くなった気持ちも、いつの間にかすっかり軽くなっていた。迅と時間を過ごすうちに、張り詰めていた糸が自然とほどけていくようだ。彼にリフレッシュしてもらいたくて横浜を選んだのに、気づけば自分の方が癒されていた。

 中華街を出たあとも、ふたりで横浜の街をあてもなく歩いた。再び海の方へ向かう途中、傾きかけた太陽を見て、透子は思いのほか時間が経っていることに気づく。

(いけない、私、普通に楽しんじゃってた)

「今日はありがとうございました、そろそろ解散しましょうか。私、帰りは電車で帰ります」

 足を止め透子が声を掛けると、迅は訝しげな顔つきになった。

「解散って、まだ夕方だぞ」