結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

「別に、並ぶのも苦じゃないし、こういうのも新鮮でいい。それに俺たちは仮とはいえ、交際中だろう。〝彼女〟が喜ぶなら、いくらでも付き合う」

 覗き込まれるように笑いかけられて、透子の胸はじんわりと温かくなる。普段と違う状況に気分を悪くするどころか、前向きに楽もうとしてくれているのが嬉しかった。

 そうこうしている内に自分たちの順番が来て、透子はフカヒレまん、迅は豚まんをそれぞれ購入した。

「わぁ、美味しそう!」

 ホカホカのフカヒレまんを手に透子が頬を緩めていると、迅は自分の豚まんをいきなりふたつに分けた。

「ほら、半分やる」

「えっ?」

「どっちにするか最後まで悩んでいただろう? こうすれば、両方楽しめる」

 この店の中華まんは種類が豊富で、他にも豚角煮まん、エビチリまんなど魅力的なものばかりだった。

「両方食べたかったの、バレてましたか……」

「眉間に皺が寄っていたからな」

 さすがにこのボリュームをふたつは無理があると思ってひとつに絞った苦渋の選択が迅にはお見通しだったらしい。

(もしかしたら、それに気づいて迅さんは豚まんにしてくれたのかな)