結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 元々備わっている家柄のよさや、カリスマ性のようなものも滲み出ているのだろう。そんな男性の隣に立っている状況を自覚し、やけに落ち着かなくなってくる。

「お腹に余裕があったら、あとで戻ってきましょうか」

 透子が迅をうながし、その場を離れようとしたそのとき、彼女たちの声が追ってきた。

「彼女も綺麗。お似合いのふたりだね」

「大人のカップルって感じ。憧れるわぁ」

(お似合い……私、迅さんの彼女に見えるんだ)

 手を繋いでいるのだから恋人に見えてあたりまえなのだが、客観的に〝彼女〟と言われると、やけにこそばゆい気持ちになった。

 お目当ての店はすぐに見つかり、北京ダックロールをふたりでひとつずつ購入する。

 薄く焼かれた生地に、照りのある北京ダックとシャキシャキの野菜が包まれている。甘辛いタレの香ばしい匂いがふわりと立ちのぼり、ひと口かじれば、しっとりとした肉の旨みと軽やかな食感が広がった。

「んー、おいしい。北京ダックは昔一度だけ、母と中華料理店で食べたことがあるんですけど、こうゆうのも気軽でいいですね」

「うまいな。それに安くて驚いた」