結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 賑やかな街の雰囲気に後押しされるように、自然とふたりの声も弾む。色とりどりの看板やおいしそうな香りに目を奪われ、あれもこれもと話題が尽きない。隣を歩く迅もどこか楽しげに目を細めている。相変わらず手は繋がれているが、透子の緊張も少しずつ収まってきた。

「あの店も美味そうだな」

「わぁ、いいですね」

 焼き小籠包の店の前で立ち止まり、店先を覗き込んでいると、どこからともなく「ねぇ、あの人、超かっこいい!」という弾んだ声が聞こえてきた。

 視線だけで声の方向を見ると、二十歳前後に見える若い女性がひそひそと話をしていた。彼女たちの視線は迅に釘付けになっている。

「ほんとだ! 背高くて、イケメンすぎない? 芸能人?」

(いえ、MSBの社長さんです)

 心の中で即答する。きっと彼女たちの使っている化粧品も彼の会社のものがたくさんあるはずだ。

 この人ごみの中でも、彼の整った容姿はごまかせない。さきほどからすれ違う人たち多くの人たちが、男女問わず、迅を目で追っていた。

(迅さんって、見た目だけじゃなくて、人を惹きつけるオーラみたいのもあるんだよね)