結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 楽しげに問われて、透子は軽く咳ばらいをして、気を取り直す。

「まずは、このまま公園を散策しましょう。そのあとはお楽しみです」

 今日は自分が主導権を取ろうと、妙な気合が入っていた透子は迅を先導するように歩き出した。

 十月の昼下がり、太陽の光に反射して、波がきらめいて見える。心地いい海風に吹かれながら透子は思い切り伸びをする。

「気持ちいいですね」

「そうだな、海に来たのはずいぶん久しぶりだ」

 隣を見ると、迅は柔らかな表情で水平線を眺めている。

(よかった、迅さんもリラックスしてくれているみたい)

「透子は、海を見たかったのか?」

 そう問われて、透子は一瞬思案する。

「はい。なんか、思い切り自然を浴びたくなって。そしたら海か山かなって思ったんです。海にしたのは単なる思い付きです」

 以前迅と食事をしたとき、子どもの頃は逗子の別荘によく行っていたと聞いたことがある。きっと海が好きなのだろうと思ったのだ。
 企業のトップとして常に数字や成果を追っている彼にとって、こうして自然の中を目的もなく歩く時間が、少しでもリフレッシュになればいい。

(私の、勝手なお節介なんだけどね)