結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

「さっきのお客様なんだけど、少し婚活に疲れてしまったみたいね。感情が抑えられなくなってあなたにあたってしまったとおっしゃられてたわ」

「そう、ですか……」

 その日の夕方、所長室で母の言葉を聞きながら、肩を落としていた。

 午後、香織とのカウンセリングがあった。

 彼女と顔を合わせたのは弁護士との仮交際を断られて以来だったが、案の定、だいぶ落ち込んでおり、口数も少なかった。

『やはり、少しでもお相手への条件を広げた方がいいかもしれません。例えば、年の近い会社員の方はいかがですか。話しも合いそうですし』

 ひとしきり、現状の整理をおこなったあと、透子は香織に何人かの男性のプロフィールを見せながら、条件の妥協を勧めた。すると、香織は突然、声を上げた。

『無責任なこと言わないで。そっちは仕事かもしれないけれど、こっちは一生がかかってるのよ!』

 驚く透子に、ハッとした顔つきになった香織は、肩を丸めて俯いた。

『ごめんなさい、今日は帰ります』

 硬い声を出したかと思うと香織は急に立ち上がり、カウンセリング室を出てしまった。

『香織さん!』