結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 迅はこの若さで大企業のトップとして会社を引っ張っている。多くの経営判断をし、想像もつかないほどの仕事量と責任を担っている。緊張や重圧は並大抵ではないはずだ。

「真壁様、せめて、こうやってお会いするときくらいは、仕事を忘れる時間にしていただけませんか」

 透子の言葉に、迅は少し驚いた顔になる。

「仕事を忘れる?」

「真壁様には息抜きの時間もあってもいいのかな、などど……」

 つい口をついて出た思い付きだったが、出過ぎた真似だったかと、言葉尻がすぼまっていく。

「君は仕事に役立てるために、俺と会っているのに?」

「たしかに私は会社と仕事のためなので、意味がありますが、真壁様もどうせ時間を使うなら、気分転換になった方が有意義ですよね……私と会うのが楽しいのかは置いておいて」

 それでも言葉を連ねていくと、迅はゆっくりグラスをテーブルに戻す。

「……やっぱり面白いな、君は」

 少し力の抜けたその笑みを見て、透子は思わず、目を瞬かせた。

 透子に偽装交際を迫ってきたときの表情とは、まったく違う柔らかさが垣間見えたのだ。