結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

「……脅してるんですか」

「いや、今の正直な気持ちが溢れ出ただけだ」

(完全に脅しにきてる)

 どうやら迅は、無理やりにでも協力させるつもりらしい。自分の置かれた状況を理解した瞬間、透子の背筋に冷たいものが走った。

 言うとおりにしなければ、迅は透子の暴言を引き合いにマリアージュ・アクシアの対応の悪さを吹聴して回るかもしれない。

 自分のせいで、母や、母が手塩にかけてここまで大きくしたマリアージュ・アクシアに傷がつくのはどうしても耐えられない。

(この人、自己中心的な上に、卑怯なのね)

 そもそもが、軽い思い付きなのかもしれない。その証拠に迅にはこちらの反応見て楽しむ余裕さえ見えた。思わず顔をしかめそうになる。けれど、それを悟られたくなかった。

「……仮に私が、協力する気になったとしても、うちの所長がこんな話を許すはずがありません。同じように所長も脅すおつもりですか?」

 整った顔をテーブル越しに精一杯睨む。すると迅は少し考えるそぶりをした。

「そうだな……」

 そのとき、ドアを軽くノックする音が聞こえた。

「どうぞ」

 迅が応えると、静かに扉が開く。入ってきたのは母だった。