結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 透子は、はっきり拒絶の意思を表す。MSBの社長であろうとなんであろうと気を遣っている場合ではない。

 しかし、迅は余裕の表情を浮かべたままだ。

「実際に結婚相談所のシステムで婚活を体験できるのは、君のような仕事熱心なカウンセラーにとってまたとない機会じゃないのか」

 言い聞かせるような口調に、透子はかつて母に『恋愛のひとつくらいしておかないと、カウンセラーとしての幅が広がらないわよ』と言われたことを思い出す。

 これまで、数多くのカップルを誕生させてきたが、セオリーやマニュアルを駆使した成功事例の積み重ね基本で、当然だが、自分の体験をもとにアドバイスしているわけではない。

 恋愛ができない自分が、カウンセラーとしてステップアップできるチャンスかもしれない。

「……たしかに悪くないのかも」

(いやいや、冷静になるのよ。どう考えてもこの人の言ってることはおかしいんだから)

 独り言のようにこぼれ出た、自らの声を慌てて否定する。

 いくら仕事に役立つとはいえ、受け入れられるわけがない。一瞬ぐらついた心をすぐに立て直して、透子は首を横に振った。