結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

「いえ、私は少し背中を押しただけです。実際がんばってすてきな方を捕まえたのは西口様ですから」

「今は私がこの人のお尻を叩いてるんですよ」

「違いないね」

 妻が笑うと、西口もつられるように顔を綻ばせてうなずく。その穏やかなやりとりから、ふたりの関係の良さが自然と伝わってきた。
 去っていく家族の後ろ姿を見送りながら、透子は自然と顔がほころんでいた。

(そうよ、結婚相談所だからこそ、幸せになれる縁だってある)

「おい」

「えっ」

 背後から不意に声をかけられ、透子は肩をびくりと跳ねさせた。勢いよく振り返れば、すぐ目の前に迅の胸元があった。

「さっきからここにいたが、まったく気づいていなかったようだな」

 迅は片手をスラックスのポケットに入れたまま、静かに透子を見下ろしていた。西口たちとの会話に意識を奪われ、気配にすら気づかなかった。

(また失態を犯してしまった……!)

 内心冷や汗をかきながら透子は一歩退き、深く頭を下げる。

「大変失礼いたしました」

「まだ時間前だ。別にいい」

 素っ気なく言い残し、迅はそのままエレベーターへ向かう。透子は慌てて彼のあとを追った。