結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

「……わかった。君のしつこさに免じて、もう一度だけ時間を作る」

「あ、ありがとうございます!」

 彼の言葉に、透子はホッとして思わず声を弾ませた。

「俺の視野を広げる、有意義な話を聞けるんだろうな。期待している」

「え……」

 そのとき透子は初めて、迅に対して暴言を吐いてしまったことに気づき血の気が引く。迅はそんな透子の様子を面白がるように、ニヤリと笑った。

「見送りは不要だ」

 そして今度こそドアに手をかけると、振り返ることなく部屋を出ていった。

 
 それから三日後、透子はいつものように事務所で仕事を進めていた。

(だめだ、集中できない)

 こっそりため息をついていると、通りかかった鈴谷が話しかけてきた。

「あれ、どうしたの透子さん。めずらしく表情が冴えない気がする」

「顔、変でしたか?」

 パソコンから顔を上げ、指先で軽く頬を押さえる。表情筋が固まっていたかもしれない。

「顔はいつも通り綺麗だけど、なにか悩んでる?」