結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

「――効率的で何が悪いんですか」

 思わず出た声は、低く沈んでいた。すると、それまで興味なさげに座っていた迅が、初めて真正面から透子を見据える。多くの男性を見てきた透子でさえ気後れするほど整った顔に見つめられながら、それでも言葉を続けた。

「人生に関わる選択だからこそ、冷静に見極める必要があると思います。あなたのように社会的立場がある方ならなおさらではないですか」

「その見極めっていうのが、ここでは味気ない情報と上っ面の会話だけだろう? それで人生を決めるなんて、ずいぶん安っぽい」

「な……」

 軽い口調の裏に、見下すような響きがあった。その一言に。頭の奥がかっと熱くなる。

「もういいでしょう。秘書を待たせているので失礼する。母には適当に言っておいて下さい」

(え、ちょっと……!)

 一方的な幕引きに思考が止まったものの、透子は次の瞬間弾かれたように立ち上がる。このまま帰しては、こちらの気が済まなかった。

「MSBの社長さんは、視野の狭い方だったんですね」

「……どういう意味だ」

 ドアノブに手を伸ばした迅の動きが止まる。