結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 透子も理屈で物事を捉えがちだが、次元が違う気がした。透子は小さく息を吸い、なんとか平静を装った。

「ずいぶん、合理的にお考えなんですね」

「まぁ、仮に結婚するとしても、結婚相談所で相手を探そうとは思わないな」

 そう言い切った迅は、わずかに口元を緩めた。棘のある言い方に透子はピクリと反応する。

 彼の発言からは、結婚相談所〝なんか〟でいい出会いがあるはずがない――そんな軽んじる響きが滲み出ていた。

(ちょっと待って、いくら大企業の社長だからって、失礼じゃない?)

 透子は、人の縁を繋ぐこの仕事に誇りを持っている。実際、ここでの活動を通じて幸せになった人は大勢いるのだ。間接的にも彼らを馬鹿にしているのだとしたら、黙ってはいられない。

「結婚相談所でこそ、いい出会いの可能性が広がるんですよ」

 はっきりと言い返すと、迅はコーヒーカップを置き、足を組み直した。その態度はだいぶ不遜に見える。

「いい出会い? とてもそうは思えないな。条件を並びたてて選ぶなんて、効率的すぎて面白みがない」

(自分は合理的に結婚したくないって言ってるのに、出会いには面白みを求めるの?)