結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

「特に透子の熱意は、最初の啖呵で身に染みてるからな。まあ、俺の態度にムカついたんだろうが」

 少しだけ口元を緩めた迅の言葉に、透子は思わず小さく笑った。

「……そうでしたね」

 あのときは、迅に結婚相談所を馬鹿にされたと思い、カッとなって暴言を吐いてしまった。気恥ずかしさがこみ上げると同時に、自分がいかに、この仕事が好きで、誇りをもっているかを再認識する。

(人を幸せにしたいと思う熱意と、相手に誠実に向き合う覚悟……か)

 夜風がふたりの間をすり抜けていく。彼に聞いてもらったことで、長く胸に巣くっていたコンプレックスがだいぶ軽くなっていた。
 少しだけ寒さを感じたとき、肩にふわりと温かい感触が落ちる。迅が自分のジャケットを脱いで透子にかぶせていた。

「迅さんが冷えちゃいます」

「俺は大丈夫だ。そのかわり、こうしてていいか」

 迅は暖をとるように、ジャケットごと透子の肩を引き寄せた。彼の逞しい上半身と密着し、心臓がトクンと跳ねた。透子は胸の高鳴りを誤魔化すようにジャケットの襟を両手でそっと引き寄せる。

「ありがとうございます」