結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

「でも、彼女が深く傷ついたのは事実で、活動中に私がカウンセラーとしてもっとフォローできたんじゃないかって、自分の対応を後悔してるんです」

 透子は借金などの個人的な事情には触れないようにしながら、簡潔に説明した。

 ふたりの破局は、恋愛感情だけで結婚に踏み切ることのリスクを透子に改めて痛感させた。

「あと、石井さんに、男の人をとっかえひっかえしてるとか、遊んでそうだとか言われましたけど、そんなこと、全然ないですから」

 迅が何も言わずに聞いてくれているのをいいことに、透子の口調は次第に滑らかになっていく。

「そもそも、生まれてこのかた、恋人なんていたことないし」

 すると、迅はわずかに目を見開き、透子を見た。

 その反応を横目にとらえながら、透子の胸はチクリと痛む。やはり自分は恋愛経験が豊富に見えるのだろうか。彼に奔放な女だと思われるのは、なぜか強い抵抗があった。

「嘘じゃないですよ。そもそも私、恋愛ができないんですから」

 言うつもりのなかった重い現実が、思わず口を突いて出てしまい、透子自身も驚く。

「恋愛ができない……」

 落ち着いた迅の声に少しだけ驚きが滲む。