結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 あらためて迅は自分が違う世界にいる人だと思い知る。

「ああ、君に似合いそうな色が新色にあったからな。開けてみてくれ」

「ありがとうございます」

 透子は素直にうなずき、小さな箱へそっと手を伸ばした。

 丁寧に箱から出し、中から現れたリップのキャップを外す。すると、ほんのりコーラルを含んだローズカラーが、艶やかな先端を覗かせた。

「綺麗な色……」

 思わず感嘆の声が漏れる。

 みずみずしく咲いた薔薇を思わせる絶妙な色味で、派手すぎないのに目を引く華やかさがあった。

 透子が光に透かすように見つめていると、迅が満足そうに目を細める。

「このくらい明るくても、透子の肌色ならちゃんと馴染む。健康的に見えるし、艶のあるタイプだから、普段使ってるリップに中央だけ重ねても立体感が出る。いつものメイクにも浮かないはずだ」

 まるで実際に塗ったところを想像しているような口ぶりに、透子は目を瞬かせた。

 気づけば迅は、こちらを観察するようにじっと見つめている。

(もっとちゃんと顔を作ってくればよかった……)

「あの、メイクについてすごく詳しいんですね」