ふと、私の足元に一冊の教科書が落ちる。
「あ、ごめん。そこ、取ってくれる?」
明るく声をかけてきたのは、さっきまで中庭にいたはずの光輝だった。
いつの間にか私の席の近くに立っていた彼は、いつも通りの軽い笑顔を浮かべている。
……なのに、その瞳の奥は、どこか冷ややかで、疲れ切っていた。
「……自分で拾えば?」
私はいつもの癖で、冷たくトゲのある言葉を投げつける。
だけど光輝は怒るどころか、面白そうにフッと笑った。
「相変わらず手厳しいね、若葉ちゃん。……その毒舌、誰が相手でもブレないのな」
私の名前を呼んだその声は、いつもみんなに向けている明るいアイドルぶった声とは、ほんの少しだけ違っていた。



