迎えた文化祭当日。
校内は色鮮やかな装飾と、生徒たちの熱気で溢れ返っていた。
私たちのクラスが上演する演劇『シンデレラ』は、体育館の特設ステージで行われることになっていた。
「ねえ、衣装の最終チェック、これで全部揃ってる?」
バックステージの隅で、私はテキパキと準備を進めながら声を張り上げる。
その隣では、智樹がボソボソと文句を言いながらも、大道具の固定を手伝っていた。
「お前、そんなに焦らなくても逃げやしないっての」
「うるさいなあ。主役の二人があんなにのんびりしてるんだから、私たちがしっかりしなきゃでしょ」
私の視線の先では、主役の王子役を演じる光輝と、シンデレラ役を演じる双葉が、最終の台本読みを行っていた。
相変わらず周囲にはクラスメイトの人垣ができている。
光輝はいつもの「爽やかなアイドルスマイル」を浮かべ、双葉は少し緊張しながらも気丈に微笑んでいた。
――誰もが羨む、完璧な「光と影」の構図。
頭では分かっているはずなのに、胸の奥でチクリと小さな棘が疼く。
(……やっぱり、私なんかが入り込める隙間なんて、最初からなかったのかな)



