同じ頃、校舎の裏手では、もう一組の「不器用なふたり」が対峙していた。
購買のパンを持ったまま歩いていた双葉の前に、ボサボサの髪にイヤホンを首にかけた智樹が立ち塞がった。
「……何よ、智樹くん。また私に嫌味?」
双葉が警戒したように一歩引く。
しかし、智樹は目を合わせないまま、ポケットに突っ込んでいた手を引っ張り出し、小さな絆創膏を差し出した。
「……これ。昨日、お前、プリントの紙で指切ってただろ」
「え……?」
双葉は驚いて自分の右手を見た。
確かに、昨日の放課後に紙で切った小さな傷口が、まだ少し赤くなっていた。
「別に、お前の世話してやったわけじゃないからな。目障りだったからだ。……じゃあ」
智樹はそれだけ言うと、耳にイヤホンを突っ込み、そっけなく背中を向けて歩き出してしまう。
「ちょっと、待ってよ!」 双葉は慌てて智樹の背中を追いかけた。
「智樹くん、どうしていつもそんなにトゲトゲするの? 私、何かあなたに嫌われるようなことしちゃった……?」
歩足を止めた智樹の背中が、わずかにこわばった。
彼はゆっくりと振り返ると、自嘲するような、けれどどこか切なげな笑みを浮かべた。
「……お前さ、いっつも周りから『しっかり者』って期待されて、笑顔貼り付けて、無理してんだろ。見ててイライラするんだよ。そんなに完璧でいようとするなよ」
その言葉は、智樹のコンプレックスから出たものだったけれど、同時に、誰にも見破られなかった双葉の「心の仮面」を正確に撃ち抜いていた。
双葉は息を呑み、そして、ぽろりと大粒の涙をこぼした。
購買のパンを持ったまま歩いていた双葉の前に、ボサボサの髪にイヤホンを首にかけた智樹が立ち塞がった。
「……何よ、智樹くん。また私に嫌味?」
双葉が警戒したように一歩引く。
しかし、智樹は目を合わせないまま、ポケットに突っ込んでいた手を引っ張り出し、小さな絆創膏を差し出した。
「……これ。昨日、お前、プリントの紙で指切ってただろ」
「え……?」
双葉は驚いて自分の右手を見た。
確かに、昨日の放課後に紙で切った小さな傷口が、まだ少し赤くなっていた。
「別に、お前の世話してやったわけじゃないからな。目障りだったからだ。……じゃあ」
智樹はそれだけ言うと、耳にイヤホンを突っ込み、そっけなく背中を向けて歩き出してしまう。
「ちょっと、待ってよ!」 双葉は慌てて智樹の背中を追いかけた。
「智樹くん、どうしていつもそんなにトゲトゲするの? 私、何かあなたに嫌われるようなことしちゃった……?」
歩足を止めた智樹の背中が、わずかにこわばった。
彼はゆっくりと振り返ると、自嘲するような、けれどどこか切なげな笑みを浮かべた。
「……お前さ、いっつも周りから『しっかり者』って期待されて、笑顔貼り付けて、無理してんだろ。見ててイライラするんだよ。そんなに完璧でいようとするなよ」
その言葉は、智樹のコンプレックスから出たものだったけれど、同時に、誰にも見破られなかった双葉の「心の仮面」を正確に撃ち抜いていた。
双葉は息を呑み、そして、ぽろりと大粒の涙をこぼした。



