その黒曜 番外編

「多久くん、何突っ立ってんの! ほら、一ノ瀬先輩が後ろから狙ってるよ!」

陸の声にハッとした多久が振り返ると、ビショビショの一ノ瀬が満面の笑みで海水を構えていた

「ひ、一ノ瀬先輩、タンマです! タンマァァ!」

ザバァァァン!!!

深夜の誰もいない海。

響き渡るのは、漆黒の単車の爆音ではなく、6人の、心からの賑やかな笑い声だった

ひとしきりはしゃぎ倒した後、みんなで防波堤に腰掛け、夜明け前の紫色の空を眺めていた

全員、服は濡れて砂まみれ

だけど、その顔には最高の充実感が浮かんでいた

「ふぅ……。たまには、こういう締まりのない夜も悪くありませんね」

レイは乱れた黒髪を耳にかけながら、首元のチョーカーに触れ、いつもの気高き、そして本当に優しい微笑みを仲間たちに向けた

「おいお前ら! 最高の夏だったな!」

蓮が叫び、陸が

「またみんなで来ようね」

と笑う

一ノ瀬も

「……まぁ、風邪を引かない程度になら、付き合ってあげますよ」

とツンとしながらメガネを拭いた

「多久くん、風邪引くなよー」

と颯太がチャラく多久の頭をクシャッと撫でる。

「はい! 黒曜、最高です!」

多久が力強く頷いた

「ついておいでなさい、私の誇り高き団員たち。私たちの夜は、まだまだ終わりませんから」

レイの言葉とともに、水平線からゆっくりと美しい太陽が昇り、黒曜の最狂の仲間たちを黄金色に優しく照らし出していった。


〜fin〜