私は高橋 千春。
最近人気のアーティスト《Noah》が好きで好きでたまらない、ど平凡な高校生。
友達もそれなりにいるし、勉強も嫌いだけどそれなりにできる。これといった長所もないし、世界平凡選手権に出たら優勝できると思う。
個性といえば、Noah好きなことだけかもしれない。
「おはようございます」
小さな声でドアを開けて自分のクラスに入る。
今日は自転車をNoahの曲を聞きながらかっ飛ばしてきたので意外にもはやく着いてしまったらしい。
二番乗りだ。
そして一番乗りはなんと男子だった。
特に真面目な印象もない、叶愛ってやつだ。この苗字、最初は私も「とあい」って読んでたんだけど、「かのあ」って読むらしい。めっちゃ可愛い。
漆黒に近い眺めの黒髪が風に靡いている。
叶愛くんはこちらをチラッとみた後、首だけペコっとした。
二番乗りの嬉しさで気づいてなかったけど、気まずいな、これ。
とりあえずリュックから荷物を取り出し、ロッカーに置く。いつもこのくらいでギリギリチャイムがなるのであまり気にしてなかったけど、この時間、何すればいいんだろ…。
心の中で顔をしかめていると、ふと、前の方の席の叶愛くんの開いている学校支給パソコンの文字が目に入った。
『Noah home page official』
ドキッとした。
もしかして、叶愛くんもNoahのファンなの?
Noahの記事ならともかく、ホームページは検索しないと出てきにくいはず。多分。
それに叶愛くんはホームページをじっと見つめたまま腕を組んで動かないのだ。
どうしたんだろう。
それに、Noahファンなら、一回話してみたいな。同担拒否とかじゃなければ…。
そう思い、私が叶愛くんの机の前にいくと、私はびっくりした。
彼は赤黒い鼻血を流して寝ていたのだ。
「あーあー、服についてるじゃないの。え?寝てた?」
「あい。寝てましたー」
保健室。
私はなぜか叶愛くんに「眠いし付き合ってー」って言われたのでなんとか付き添って保健室まできた。
かなり制服が汚れていたので、替えの制服ももらって。
「じゃあ私職員室用事あるから。ほらっ、着替えて帰っときな」
保健室の先生がそう言って出ていくと、保健室には私と叶愛くん二人になった。
何この気まずい展開!
叶愛くんは、眠たいのかしばらくぼーっとした後、奥の方に行って着替え始めた。
私、帰っていいのかな…。
すると、私の耳に衝撃が走った。
叶愛くんが急にNoahの歌を口ずさみ始めたのだ。
しかも、結構マイナーな曲。
それだけなら「えっ、やっぱりNoahファンだったんだ」で済むのだが、問題はそこじゃない。
・・・・・・・・・
歌声が似すぎている。
間違いない。
これまで何百回かNoahの歌声を聞いてきた私なら断言できる。
本人だ。
単に似ているだけかも、とかは一切なかった。私が間違えるはずがない。
心臓の鼓動を抑えながら、叶愛くんが出てくるのを待った。
すると少し古いデザインのシャツに着替えてきた叶愛くんがこっちに歩いてきた。
「高橋さん、帰ろ」
「う、うん」
少しだけ躊躇ったが、私は勇気を出して彼の背中に言ってみた。
「叶愛くんって…Noahなの?」
すごく小さな声しか出なかった。
でも、叶愛くんはピタッと足だけ止めた。
少し間が空いた後、問い返される。
「……なんで?」
怪訝そうな声。
でも、ここまできたら止まれない。
「私、Noahの大ファンだから。声、あの…似てる、なって」
叶愛くんはゆっくりとこちらを見た。
綺麗な目で数秒間見つめられる。
こんなこと思っている場合じゃないのだが、こう見ると、すごく顔が整ってるなあと思った。
何秒経っただろう。
叶愛くんは大きなため息をついた後、諦めたように言った。
「バレたら仕方ないよね」
そしてまた前を向いてスタスタと歩き出した。
今度はさっきよりはや足だったので、私はゼエゼエしながらついていく。
「ねえ、ほんとなの?」
彼は止まらずに言う。
「高橋から聞いてきたんだろ」
心の底からうざいと思っている声だ。
私は怖気付いて、そこからもう何も聞けなかった。
二人で無言歩き、クラスに着いた。賑やかな声が聞こえる。
少し距離を空けて入った。
最近人気のアーティスト《Noah》が好きで好きでたまらない、ど平凡な高校生。
友達もそれなりにいるし、勉強も嫌いだけどそれなりにできる。これといった長所もないし、世界平凡選手権に出たら優勝できると思う。
個性といえば、Noah好きなことだけかもしれない。
「おはようございます」
小さな声でドアを開けて自分のクラスに入る。
今日は自転車をNoahの曲を聞きながらかっ飛ばしてきたので意外にもはやく着いてしまったらしい。
二番乗りだ。
そして一番乗りはなんと男子だった。
特に真面目な印象もない、叶愛ってやつだ。この苗字、最初は私も「とあい」って読んでたんだけど、「かのあ」って読むらしい。めっちゃ可愛い。
漆黒に近い眺めの黒髪が風に靡いている。
叶愛くんはこちらをチラッとみた後、首だけペコっとした。
二番乗りの嬉しさで気づいてなかったけど、気まずいな、これ。
とりあえずリュックから荷物を取り出し、ロッカーに置く。いつもこのくらいでギリギリチャイムがなるのであまり気にしてなかったけど、この時間、何すればいいんだろ…。
心の中で顔をしかめていると、ふと、前の方の席の叶愛くんの開いている学校支給パソコンの文字が目に入った。
『Noah home page official』
ドキッとした。
もしかして、叶愛くんもNoahのファンなの?
Noahの記事ならともかく、ホームページは検索しないと出てきにくいはず。多分。
それに叶愛くんはホームページをじっと見つめたまま腕を組んで動かないのだ。
どうしたんだろう。
それに、Noahファンなら、一回話してみたいな。同担拒否とかじゃなければ…。
そう思い、私が叶愛くんの机の前にいくと、私はびっくりした。
彼は赤黒い鼻血を流して寝ていたのだ。
「あーあー、服についてるじゃないの。え?寝てた?」
「あい。寝てましたー」
保健室。
私はなぜか叶愛くんに「眠いし付き合ってー」って言われたのでなんとか付き添って保健室まできた。
かなり制服が汚れていたので、替えの制服ももらって。
「じゃあ私職員室用事あるから。ほらっ、着替えて帰っときな」
保健室の先生がそう言って出ていくと、保健室には私と叶愛くん二人になった。
何この気まずい展開!
叶愛くんは、眠たいのかしばらくぼーっとした後、奥の方に行って着替え始めた。
私、帰っていいのかな…。
すると、私の耳に衝撃が走った。
叶愛くんが急にNoahの歌を口ずさみ始めたのだ。
しかも、結構マイナーな曲。
それだけなら「えっ、やっぱりNoahファンだったんだ」で済むのだが、問題はそこじゃない。
・・・・・・・・・
歌声が似すぎている。
間違いない。
これまで何百回かNoahの歌声を聞いてきた私なら断言できる。
本人だ。
単に似ているだけかも、とかは一切なかった。私が間違えるはずがない。
心臓の鼓動を抑えながら、叶愛くんが出てくるのを待った。
すると少し古いデザインのシャツに着替えてきた叶愛くんがこっちに歩いてきた。
「高橋さん、帰ろ」
「う、うん」
少しだけ躊躇ったが、私は勇気を出して彼の背中に言ってみた。
「叶愛くんって…Noahなの?」
すごく小さな声しか出なかった。
でも、叶愛くんはピタッと足だけ止めた。
少し間が空いた後、問い返される。
「……なんで?」
怪訝そうな声。
でも、ここまできたら止まれない。
「私、Noahの大ファンだから。声、あの…似てる、なって」
叶愛くんはゆっくりとこちらを見た。
綺麗な目で数秒間見つめられる。
こんなこと思っている場合じゃないのだが、こう見ると、すごく顔が整ってるなあと思った。
何秒経っただろう。
叶愛くんは大きなため息をついた後、諦めたように言った。
「バレたら仕方ないよね」
そしてまた前を向いてスタスタと歩き出した。
今度はさっきよりはや足だったので、私はゼエゼエしながらついていく。
「ねえ、ほんとなの?」
彼は止まらずに言う。
「高橋から聞いてきたんだろ」
心の底からうざいと思っている声だ。
私は怖気付いて、そこからもう何も聞けなかった。
二人で無言歩き、クラスに着いた。賑やかな声が聞こえる。
少し距離を空けて入った。

