私立鳳学園の昼休みは、いつもと変わらない穏やかな時間が流れていた。
新入生の俺、高橋は、中庭のベンチで一人パンをかじりながら、目の前を通り過ぎる「あの人」の姿に目を奪われていた。
学年トップの成績、乱れのない美しい黒髪、そして誰に対しても崩さない丁寧な敬語。
彼女の名前は九条 澪。この学園の誰もが憧れる、高嶺の花だ。
「あら、高橋君。そんなところでパンを食べていると、風邪を引いてしまいますよ?」
すれ違いざま、彼女が俺に向かって上品に微笑んだ。
心臓が跳ね上がる。
「み、ミオさん! 大丈夫です、ありがとうございます!」
「ふふ、なら良いのですが。では、放課後の委員会で」
小さく手を振って去っていく彼女の後ろ姿を見送りながら、俺はただの一般生徒である自分との身分の違いを噛み締め、ため息をついた。
――しかし、俺はその日の放課後、この学園の「本当の姿」を知ることになる。
放課後、裏門近くの路地裏。
俺は運悪く、他校のガラの悪い不良3人に囲まれていた。
「おい鳳のガキ、ちょっと面貸せや。財布出せよ」
「や、やめてください……!」


