踏まれた手の痛みにぎゅうっと唇を噛む。
まるで煙草を踏み消す様に、二回捻じられた手は悲鳴を上げていた。
それなのに足を退かしてくれるつもりのないお兄さんは、私の前に三本の指を立てた。
「山田芽依子。お前が選べる選択肢は三つだ」
「み、みっつ⋯?」
「ひとつは家も何もかも売って足りなきゃ自分自身を売って稼いで2000万返すか」
「自力で小峰裕二を見つけて2000万返済させるか」
そこで言葉を止めた黒髪お兄さんの顔をじっと見上げる。
相変わらず色のない表情は、震えるほど、冷たい。
「最後の、ひとつは?」
瞬きの回数すら少ない彼は、果たして本当に人間なのかと疑いたくなるほど、リアルさがない。
そんな彼に手を踏まれながら、最後のひとつの選択肢を催促する。
だって、もしかしたら借金返さなくてもいい方法を提示してくれるんじゃないかって、殴られたのに期待してしまったから。
だけど現実はそう甘くはないみたい。
「ここで俺らに都合よくこき使われて働くか」
「は⋯、」
「特別に選ばせてやる」
神様は、いや、この男は、私に罰を与えるつもりだ。
私は何も悪いことなんてしていないのに。



