その黒曜、あまりに気高く、あまりに最狂。

静寂が戻った路地裏で、俺はガタガタと震えながら座り込んでいた。
レイは、肩のブレザーを直すと、ゆっくりと俺の前に歩み寄り、しゃがみ込んだ。

「怪我はありませんか、高橋君」

昼間と全く同じ、優しい声。
だけど、その背後には『黒曜』の屈強な男たちが、彼女の背中を崇めるように直立不動で控えている。

「あ、あの……ミオ、さん……?」

恐る恐る名前を呼ぶと、彼女は形の良い唇をふっと緩め、人差し指を自分の唇に当てた。

「ふふ、学校では『ミオさん』。ここでは『レイさん』。……このことは、二人だけの内緒にしてくださいね?」

綺麗にウインクをしてみせた彼女は、再び単車に跨ると、爆音と共に夜の街へと消えていった。


翌朝、中庭。

「おはようございます、高橋君。今日も良い天気ですね」

いつも通り、お淑やかに微笑む九条澪。

俺は真っ赤になる顔を隠しながら、心の中で深く誓った。
一生、この人の部下としてついていこう、と。