その黒曜、あまりに気高く、あまりに最狂。

九条澪――いや、黒曜の総長「レイ」は、冷たい瞳で他校の不良たちを見下ろした。

「静かにしてください。あなた方の怒声は、夜の風の音よりも価値がありません」

誰にでも敬語。それは昼も夜も変わらない。
だけど、今彼女が放つ敬語は、慈悲ではなく、絶対的な支配の証だった。

「なんだこの女ぁ!」

不良のリーダー格が、鉄パイプを振り回してレイに殴りかかる。

「危ない!」

思わず叫んだ俺の目の前で、信じられない光景が起きた。
レイは眉一つ動かさず、最小限の動きで鉄パイプをかわすと、相手の懐に踏み込んだ。

衣服の擦れる綺麗な音。次の瞬間、ドン!という鈍い衝撃音と共に、不良の巨体が地面に叩きつけられていた。

「がはっ……!?」

「手加減をして差し上げたいのは山々ですが、あいにくその方法を存じ上げないのです」

流れるような動作で残りの2人の鳩尾に拳を叩き込み、
一瞬で3人を地べたに這いつくばらせる。圧倒的な、次元の違う武力。

レイは怯えて動けない不良の頭を、容赦なく見下ろした。

「頭を下げたままで結構ですよ。どうせ、二度と私と目を合わせる機会はありませんから。ですから二度と我が校の生徒に近づかないと誓いなさい」

「ひ、ひぃぃっ! すいませんでした!」

不良たちは這うようにして、一目散に逃げ去っていった。