記憶の欠片

 駅に着くと、改札前にはすでに日菜が立っていた。


 「愛梨ー!」


 大きく手を振る日菜に駆け寄る。


 「おはよー」


 「そのワンピース、かわいい!」


 「ありがと!」


 二人で笑っていると、後ろから聞き慣れた声がした。


 「おはよ」


 振り向く。


 そこには湊音くんが立っていた。


 白いTシャツに薄いブルーのシャツを羽織っていて、いつもの制服とは違うラフな雰囲気。


 「二人とも、似合ってる」


 照れくさそうに笑う。


 「ありがと!」


 その時だった。


 「ごめん、待った?」


 聞き慣れた柔らかい声。


 振り返ると、月城くんがゆっくり歩いてきた。


 紺色のリネンシャツに白のショルダーバッグ。


 シンプルなのに、すごく似合っていて。


 制服姿しか見たことがなかった私は、思わず見惚れてしまう。


 「……」

 目が合う。


 一瞬だけ時間が止まった。


 月城くんは何か言いかけて、小さく視線を逸らした。


 「……おはよ」


 「お、おはよう!」


 声が少し裏返ってしまう。


 それに気付いた日菜が、隣で小さく笑っていた。