世にも奇妙な買取屋


【閉店五分前にだけ流れる案内放送を聞くと、ひとりだけ姿を消す】

 新しくできた巨大ショッピングモールには、そんなこわい噂があった。

 でも、そんなのはただの都市伝説。

 たから、私は今日、友達のアミナとショッピングモールに遊びにきた。

 ゲームセンター、フードコート、雑貨屋……。

 夢中になって買い物をしていると、気づけば閉店時間が近づいていた。

「めっちゃ楽しかったねー!」
「お腹すいたから、なにか食べて帰ろうよ」
「アミナさっき、クレープ食べてたじゃん!」
「もう、わかってないなぁ。スイーツは別腹なの」
「じゃあ、私ひとりでラーメン食べに行こうかな?」
「え、うそうそ、ラーメンも別腹!」
「ぷ、なにそれー!」

 ケラケラと笑いながら出口に向かっている中、突然館内放送が流れた。

『本日もご来店ありがとうございました! 只今よりお客様をひとりだけ補充いたします♪』

 補充? なにそれ?

 おかしな放送に首を傾げた時、館内の照明が一瞬だけ消えた。

 パチン。だけど、すぐに明るくなる。

「……今のなんだったんだろうね……え、アミナ?」

 気づくと、隣にいたはずのアミナがいなくなっていた。

「ア、アミナ、どこっ!?」

 私は店内を必死に走り回った。

 ゲームセンター、フードコート、本屋、トイレ……どこにもいない。

 慌ててインフォメーションへ駆け込み事情を話すと、スタッフは不思議そうな顔をした。

「お客様は、お一人でご来店されてますよね?」

「え、な、なにを言ってるんですか? 私はアミナと一緒に来たんです。ほら、さっき一緒に撮った写真のこの子……」

 慌ててスマホをスクロールした指が止まる。

 アミナとクレープを食べた時の写真が消えていた。

 ううん、それだけじゃない。

 アミナと撮った他の写真も、トーク履歴も、連絡先さえ、全部消えている。

 まるで、アミナという人間が最初から存在してなかったみたいに。

「お疲れのようですね。本日はもうお帰りになったほうがよろしいですよ」

 スタッフにうながされた私は、そのまま強制的に出口へと案内された。

 モールを出ようとした瞬間、自動ドアの横にある大きな館内案内図が目に入った。

 そこには、小さな文字でこう書かれている。

【収容人数 一日最大五万人】

 その下には、さらに小さく……。

【不足分は館内で補充されます】

「あ、あの、これって!」

「またのご来店お待ちしていまーす♪」

 勢いよく背中を押され、私はモールの外へと閉め出された。

 自動ドアはもう開くことはなく、最後に館内放送がもう一度流れる。

『本日も一名様、ご協力ありがとうございました!』

 私は、しばらく呆然としていたが、モヤモヤしていたものが抜け落ちたみたいに歩き出した。

「あーお腹すいちゃった。今日はまだなにも食べてないし、ラーメンでも食べて帰ろっと!」


〈解説〉

♦️このショッピングモールは、毎日決まった数の『客』を維持するために、閉店時にひとりずつ館内へ取り込み、その不足分を補充していたんだわ!

♣️じゃあ、アミナはどうなったの?

♦️ショッピングモールのお客さんとして永遠に数えられる存在になったってこと。でも、語り手はもうあまり気にしてないようね。

♣️クレープを食べたことすら忘れてるってことは……。

♦️もうお友達のことも、すっかり忘れちゃったみたい!