世にも奇妙な買取屋


 学校帰りに、古びた駄菓子屋を見つけた。

 そこの前には運試しと書かれたガチャガチャが置かれている。

「誰でも無料で回せるよ。やるかい?」

 そう声をかけてきたのは、駄菓子屋の亭主と思われる白髪の老人だった。

「じゃあ……一回だけ」

 そう言ってガチャガチャを回すと、出てきたカプセルには、小さな紙が一枚入っていた。

【ハズレ】

 どうやら、運がなかったということらしい。

 出てきた紙を丸めてポケットに突っ込むと、どういうわけか老人が泣いていた。

「ありがとう! 本当ありがとう、ハズレを引いてくれて」

「え、は?」

 意味がわからない。

 俺の両手を掴んで何度も感謝の気持ちを伝えてくる気味の悪い老人から逃げるように、その場から立ち去る。

 そして次の日の朝。

 近所の公園で白骨した遺体が見つかったというニュースが流れていた。

 しかもその遺体は、三十年前に行方不明になっていた人物だという。

 生前の写真が画面いっぱいに映し出される。

「え……」

 思わず、口に咥えていた歯ブラシを落とした。

 白骨遺体の人物は、昨日駄菓子屋にいた亭主だった。

 意味がわからないどころではない。

 だって、あの老人は昨日生きていた。

 あのあと誰かに殺されたのだとしても、一晩で白骨するはずがない。

 俺は確かめるために、もう一度駄菓子屋に向かった。

 そこに老人の姿はなく、昨日と同じなのは店の前にある運試しのガチャガチャだけ。

 どうしてあの老人は、俺が引いたハズレの紙をあんなに喜んでいたのか。

 泣きながら感謝してくるなんて、普通じゃない。

 アタリを引き直せば、なにかわかるのか……。

 そう思って再びガチャガチャに手を伸ばえた、その時だった。

「君は、もう引けないよ」

 すぐ真後ろから声がした。

 なぜか、振り返ることができない。

 ヤバいものが後ろにいると、本能的に感じる。

「今日から君が店番だ。早く〝ハズレ〟を引いてもらえるといいねえ」

 反射的にバッ! と手で振り払うと、後ろにはなにもいなかった。

 ――二十年後。駄菓子屋は変わらずに同じ場所に存在し続けている。

「ねえ、おじさん。このガチャガチャ回してもいい?」

「ああ、もちろん」

 少年がガチャガチャを回すと、アタリの紙が出てきた。

「わあ、やった! なにか貰えるの?」

「……なにもない。ただこのまま無事に帰れるだけだよ」

「ちぇ、なんだよ、それ。つまんないの」

 誰か……。

 お願いだから早く、俺と交代してくれ!


〈解説〉

♦️この物語のガチャガチャは『アタリ』が幸運ではなく、『ハズレ』を誰かに引かせて呪いを押しつけることが本当の目的だったみたい!

♣️三十年前に行方不明になった老人は、主人公がハズレを引いた瞬間、ようやく店番の呪いから解放されたんだね。

♦️その結果、本来三十年前に迎えていたはずの死が一気に訪れ、白骨遺体として発見されたってこと。

♣️主人公は二十年後もまだ解放されてないみたいだけど、大丈夫かな?

♦️大丈夫ではなさそうだけど、終わりの見えない呪いの中で次のハズレを今日も待ち続けているのは間違いないわね!