私には、双子の弟がいる。
顔はそっくりだけど、性格は正反対。
私は活発だけど、レンは慎重で物静かな子だった。
そんな私たちには、変な決まりがあった。
『昨日のことは、絶対に確認しないこと』
幼い時から、なぜか両親にそう言われていた。
その理由を聞いても、『双子には秘密が必要なのよ』と言われるだけ。
そんなある日、学校から帰ると、お母さんがビデオカメラで撮影した動画を見ていた。
「懐かしいわ……」
公園で遊ぶ私。
誕生日ケーキを食べる私。
入学式で笑う私。
なぜか映っていたのは、私、ひとりだった。
「お、お母さん……レンは?」
「レンは……あなたの想像が作った幻よ」
「え、な、なにを言ってるの?」
「まだ思い出せない?」
お母さんの言葉が怖くて、私は自分の部屋に駆け込んだ。
レンが幻? ありえない。
だって、レンは今もいる。
毎日話している。
レンがいないなんて、あるわけない。
「ねえ、レン。お母さんがおかしくなっちゃったよ……」
「ううん。お母さんは真実を言っただけだよ」
「レンまで変なこと言わないで」
「僕は、君が忘れた記憶だよ」
その瞬間、頭の奥に眠っていた記憶がよみがえった。
幼稚園の頃、私には本当に双子の弟がいた。
でも、ある事故でレンは死んでしまった。
悲しみに耐えられなかった私は、弟がいると思い込むことで自分の心を守っていたんだ。
「僕はずっとそばにいる。たとえ姿が見えなくなってもね」
「やだ、レン、消えないでっ」
「大丈夫。必ずまた会えるよ」
それから、私はレンを見ることはなくなった――。
〈解説〉
♦️語り手は、双子の弟レンがずっとそばにいると思っていたけれど、実は幼い頃に本当の弟を亡くしていたのね。
♣️両親が「昨日のことを確認してはいけない」と言っていたのはどうして?
♦️それは、語り手が忘れてしまった悲しい過去を無理に思い出して、心が傷つかないように守っていたからなのかもしれないわ。
じゃあ、最後にレンが言った「必ずまた会える」という言葉の意味はわかるかしら?
♣️弟は消えたんじゃなくて、語り手の心の一部になった。
双子は同じ場所から生まれたから、きっとそういうこともできるはず。
♦️だったら、私たちも双子だから、どっちかが死んだらどっちかの心の一部になって生きられるね!
♣️なに言ってるの? 僕たちはもうどっちも死んでるじゃないか。



