世にも奇妙な買取屋


 ある日、奇妙な形の種を拾った。

 好奇心旺盛な僕は、植木鉢に入れてそれを育てた。

 咲いたのは、ギザギザの歯が生えている『ヒトクイ花』だった。

 見た目は普通の花に見えるけれど、試しにサッカーボールを近づけたら口が大きく開いて、そのまま丸呑みをした。

「す、すごい……!」

 僕は、部屋にあったいらないものや口に入らなそうな机までヒトクイ花に食べさせた。

 ゴクンッと呑み込んでしまうのに、お腹が膨れるわけじゃない。

 もしかしたら、一瞬で消化されてしまうのか。

 それとも、栄養になって根っこに流れてしまうのか。

 色々と考え出すと、わくわくして好奇心が止まらない。

 そして、僕はついにこんな疑問にたどり着いた。

「食べられるって、どんな感じなんだろう?」

 この口の中に入ったら、どうなってしまうのか、気になって気になって、なにも手につかない。

 だから、ある夜に僕は、ヒトクイ花の口に自分から近づいた。

 ヒトクイ花は、そのまま僕を丸呑みしてくれた。

 中は、とても暗かった。

 唾液なのか少しぬるぬるしているけれど、匂いはない。

 柔らかな壁に包まれながら、体が少しずつ溶けていくのを感じた。

「わあ、こんな感じなんだ!」

 それが人間の僕の最後の言葉だった。

 翌朝、花は今まで見たこともないほど鮮やかに咲いていた。

勇太郎(ゆうたろう)、そろそろ起きないと学校に遅刻……あれ、勇太郎?」

 いつものように部屋のドアが開いて、母さんが起こしにやってきた。

 僕がベッドにいないことに気づいて、慌てている。

 大丈夫、僕はここにいるよ!

 その声に気づいたみたいに、母さんが花のほうに近寄ってきた。

「いつ見ても不気味な花……」

 そういえば、母さんはこのヒトクイ花を嫌っていた。

 いつも気持ち悪いから早く捨てなさいと言ってきたけれど、僕は断った。

 母さんは、わかってないなぁ。

 こんなにわくわくする花は、他にないっていうのに。

 その時、僕の中でまた好奇心が湧いてきた。

 食べられる感覚はわかったけれど、人を食べるってどんな感じなんだろう?

 僕は、大きな口を開いたあと、母さんのことを丸呑みした。

 へえ、母さんってこんな味なんだ!

 他の人でも試してみたいな。



〈解説〉

♦️物語の違和感は、『人間だった僕の最後の言葉だった』という一文のあとも、勇太郎くんの語り手が続いていること!

♣️つまり語り手は死んだんじゃなくて、ヒトクイ花そのものになっちゃったってこと?

♦️ピンポーン! さらに人間だった頃の記憶や性格も残っているということは、きっと勇太郎くんの好奇心はこれからも止まらないはず。

♣️じゃあ、この話で本当にこわいのはヒトクイ花じゃないね。

♦️一番恐ろしいのは、一度も満たされることなく、次々と新しい『知りたい』を生み続ける勇太郎くんの好奇心そのものなのかもしれないわ!