***
「ねえ、聞いた? あの噂」
お昼休憩に入ったばかりのオフィス。
給湯室から聞こえてきた聞き覚えのある声に、私はカップを持ったまま足を止めた。
(たしか…………広報部の高橋さんと、営業部の佐倉さん……?)
彼女たちは声を潜めて、だけど興奮を隠しきれない様子で盛り上がっている。
「────やっぱり本当なんですか? 例の、冴島社長の婚約者の話」
その名前が耳に飛び込んできた瞬間、心臓がドクン、と大きく跳ねた。
手元のマグカップがカタカタと小さく震える。
(嘘……。もしかして、私とのことがバレた……!?)
社内では完璧に隠し通しているつもりだった。
だけど、どこかでボロが出て、噂になってしまったのだろうか。
私はこのことを親以外の誰にも伝えていない。
彗さんだって、しばらくは公にするつもりはないと言っていた。
だけど────。
彗さんほどの立場なら、必要最低限の人には事前に伝えているかもしれないし、
あの夜の時も、もしかしたら誰か会社の人に目撃されていたのかもしれない───。
頭の中が真っ白になり、最悪の事態がぐるぐると渦巻く。
(もし相手が私だとバレたら……私はともかく、彗さんの尊厳にも傷が付く────)
「ねえ、聞いた? あの噂」
お昼休憩に入ったばかりのオフィス。
給湯室から聞こえてきた聞き覚えのある声に、私はカップを持ったまま足を止めた。
(たしか…………広報部の高橋さんと、営業部の佐倉さん……?)
彼女たちは声を潜めて、だけど興奮を隠しきれない様子で盛り上がっている。
「────やっぱり本当なんですか? 例の、冴島社長の婚約者の話」
その名前が耳に飛び込んできた瞬間、心臓がドクン、と大きく跳ねた。
手元のマグカップがカタカタと小さく震える。
(嘘……。もしかして、私とのことがバレた……!?)
社内では完璧に隠し通しているつもりだった。
だけど、どこかでボロが出て、噂になってしまったのだろうか。
私はこのことを親以外の誰にも伝えていない。
彗さんだって、しばらくは公にするつもりはないと言っていた。
だけど────。
彗さんほどの立場なら、必要最低限の人には事前に伝えているかもしれないし、
あの夜の時も、もしかしたら誰か会社の人に目撃されていたのかもしれない───。
頭の中が真っ白になり、最悪の事態がぐるぐると渦巻く。
(もし相手が私だとバレたら……私はともかく、彗さんの尊厳にも傷が付く────)



