監禁された私には、時空の監視者の愛情は伝わらない

 私がいるこの部屋は壁も天井も床までも真っ白で、数少ない家具──ベッドと椅子とテーブルまで真っ白だ。

 こんな部屋に、私はもう50日以上も監禁されている。

 カレンダーなんてないこの部屋で、どうして正確な日数がわかるかというと、私は10日に一度、時空の監視者に抱かれているからだ。

 時空の監視者──彼らは異世界の人間を捕らえて監禁するのが仕事で、捕らえた人間を凌辱できる権利を得ている。

 そして私は、この世界からすると異世界の人間だ。

 でも私は、ここに住まう人々と見た目はさほど変わらない。

 けれど、ここは異世界だ。それだけは間違いない。ああ、もしかしたら、元の世界で言う地獄と呼ばれる場所かもしれない。

 そう思う理由は、凌辱される日々が続いているからではなく、私が地獄に落とされることをしたという確固たる理由があるから。

 そんなことを考えていたら、いつの間にか夜の帳が下りて、部屋は真っ暗になっていた。たとえ部屋が白一面であっても、灯りがなければ色として認識されることはない。
 
 暗闇が心地良い。ベッドの端に蹲りながら、このまま消えてしまいと願ってしまう。けれど、神様に嫌われてしまった私には、そんな小さな願いすら叶えてもらえるはずもない。

 ───ガチャリ。

 私の手ではどうしたって開けることができない扉がいとも簡単に開かれ、揃いの水色のワンピースに身を包んだ女性が3人、断りもなく部屋に入ってくる。

 先頭の蝋燭を持つ女性だけは、エプロンを付けていない。見た目も二十代後半で一番年上に見える。きっと立場が上の人なのだろう。

 初日にカイナと名乗った以外、会話らしい会話はしていないから詳しくはわからない。わかりたくもないけれど。

 もう二人は真っ白のエプロンを付けていて、メイドと呼ばれる者たちだ。名乗ることはなかったけれど、毎日のようにこの部屋に来るので顔だけは覚えてしまった。

 肩口に切り揃えた髪の少女と、おさげを結った、まだあどけなさが残る少女。二人はお湯の張ったタライと布と私の着替えを手にしている。

「そろそろお時間ですので、お召し替えをお持ちしました」

 
 蝋燭をテーブルに置いて淡々と告げるカイナに、私の体がびくりと撥ねる。

 無言で首を左右に振り、精一杯嫌だと訴えるけれど、誰一人として表情を動かすことなく、粛々とタライを床に置き、テーブルの蝋燭を使って部屋に明かりを灯す。 

 明るくなった部屋とは対照的に、私は暗鬱な気持ちになる。どうしたって逃げることはできない現実に、俯き、きつく唇を噛み締める。

「身体をお拭きします」 

 丁寧な口調だが、これは命令だ。さっさと着替えろと。これから始まることに向けて準備をしろと、急かしている。

 それでも身体は動かない。縋るようにカイナを見つめても、侍女たちは表情を変えることなく私に手を伸ばした。

 時間にして10分程度で私の体を拭き、新しい夜着を着せた侍女たちは、荷物を抱えて足早に部屋を出る。そうすれば入れ替わるように、大きな人影が部屋へと足を踏み入れた。

 侍女達と同じように何の断りも無く部屋に足を踏み入れたのは、時空の監視者と呼ばれるもの。

 彼がここに来た理由は一つだけ。今日もまた、私を抱くためだ。