「あら、楽しそうね。私も混ぜてほしいわ」
そんな中に、いそいそと混ざり混んで来たアメリアにランバードは呆れたような顔を向けるものの、嗜めるような事は無かった。
その様子から、このお姫様が、常日頃から護衛の中に混ざり混んでいる事が伺えて、ウィズはフードの陰でヒッソリと苦笑した。
共に旅する妹姫は、頑なに馬車の中から出てこようとしないのだが、高貴な身分の未婚の娘としてはそちらの方が正解であり、アメリアの行動の方が非常識なのである。
だが、ウィズの顔を見て笑いかける事ができる少女を、常識に当てはめようとしても無駄なことだろう。
「ナターシャは気が弱いからしょうがないのよ。ランバード達のことだって怖がっているくらいなのだから。ウィズの顔がどうこうというより、見知らぬ傭兵だというだけできっと気絶するわね」
呆れたような口調ながらも、そんな気の弱い妹が可愛くてしょうがないのだろう。ナターシャのことを語るアメリアの瞳には愛しさが煌めいていた。
「それにしても、ウィズはどこから来たの?ボロボロの格好だけど、魔石はあっさり人にあげちゃうし、とても強いし」
ウィズの隣に腰を落ち着けると同時にすごい勢いで質問を始めるアメリアに、ウィズがわずかに身体を後ろにずらした。
「そもそも、その剣技ってどこで身につけたの?ここら辺の動きではないわよね?見た事ないもの。それに、動きや食事の所作も綺麗だわ。どこかの国の貴族だって言われても驚かないくらい」
しかし、その様子にめげることなく引かれたぶんだけ詰め寄ってアメリアの質問の嵐は止む事がない。
ウィズは思わず救いを求めるように周りを見渡すも、ランバードを始め先ほどまで和やかに会話していたはずの一同がスゥッと無言のまま目をそらした。
顔は見えないものの、明らかに困惑しているウィズを助けないのは、|こうなって(・・・・・)しまったアメリアを止める術を持たなかったからだ。さらに、多少の差はあるものの不思議な騎士の正体に対する好奇心を持っていたからに他ならない。
自分たちで問いただすことは礼儀として戸惑うものの、アメリアならば、なんとなく許されるであろう空気があった。
結果、1人の味方も得られないと悟ったウィズは、ため息を1つつくと白旗を上げることにする。
ある意味規格外の目の前の少女の好奇心を、ほんの少し満たすくらいの情報なら渡しても問題ないだろうと判断したのだ。
「大陸の東の端にあるロドムという小国をご存知ですか?私はその国の出身で、現在、自国へと戻るために旅している途中です」
いつの間にか静まり返った空間に、耳に心地よく響く低めの滑らかな美声が流れた。
「その姿だと、これまでも随分長く旅していたみたいだけど、何をしていたの?見聞の旅?」
アメリアが小首を傾げ、さらなる疑問を口にした。
若い騎士の中には武者修行と称して無謀な旅に出る事もあると聞く。アメリアは、その類かと思ったのだ。
無邪気な問いに、ウィズから押し殺したような低い笑い声が漏れた。
「そんな大層なものではありません。魔術の事故で、強制転移させられたんです。座標が指定されていなかったため、跳ばした方もどこに行ったのか分からなくなってるでしょうね」
「まあ!大変だったのね。どこに飛ばされたの?」
アメリアの顔が気の毒そうに歪んだ。
未熟な者の魔術暴発ほど厄介なものはない。
自身も持て余すほどの魔力に恵まれたアメリアも、幼い頃は何度も魔力暴走を起こしかけ、周囲に多大な迷惑をかけてきた。
今回、神都を目指すのも、魔術大国でもある彼の国の学園に入学し、魔術の鍛錬を積むためである。
「…………リーン大陸に」
低く呟かれた言葉に、アメリアのものだけではない驚きの声が上がる。
そんな中に、いそいそと混ざり混んで来たアメリアにランバードは呆れたような顔を向けるものの、嗜めるような事は無かった。
その様子から、このお姫様が、常日頃から護衛の中に混ざり混んでいる事が伺えて、ウィズはフードの陰でヒッソリと苦笑した。
共に旅する妹姫は、頑なに馬車の中から出てこようとしないのだが、高貴な身分の未婚の娘としてはそちらの方が正解であり、アメリアの行動の方が非常識なのである。
だが、ウィズの顔を見て笑いかける事ができる少女を、常識に当てはめようとしても無駄なことだろう。
「ナターシャは気が弱いからしょうがないのよ。ランバード達のことだって怖がっているくらいなのだから。ウィズの顔がどうこうというより、見知らぬ傭兵だというだけできっと気絶するわね」
呆れたような口調ながらも、そんな気の弱い妹が可愛くてしょうがないのだろう。ナターシャのことを語るアメリアの瞳には愛しさが煌めいていた。
「それにしても、ウィズはどこから来たの?ボロボロの格好だけど、魔石はあっさり人にあげちゃうし、とても強いし」
ウィズの隣に腰を落ち着けると同時にすごい勢いで質問を始めるアメリアに、ウィズがわずかに身体を後ろにずらした。
「そもそも、その剣技ってどこで身につけたの?ここら辺の動きではないわよね?見た事ないもの。それに、動きや食事の所作も綺麗だわ。どこかの国の貴族だって言われても驚かないくらい」
しかし、その様子にめげることなく引かれたぶんだけ詰め寄ってアメリアの質問の嵐は止む事がない。
ウィズは思わず救いを求めるように周りを見渡すも、ランバードを始め先ほどまで和やかに会話していたはずの一同がスゥッと無言のまま目をそらした。
顔は見えないものの、明らかに困惑しているウィズを助けないのは、|こうなって(・・・・・)しまったアメリアを止める術を持たなかったからだ。さらに、多少の差はあるものの不思議な騎士の正体に対する好奇心を持っていたからに他ならない。
自分たちで問いただすことは礼儀として戸惑うものの、アメリアならば、なんとなく許されるであろう空気があった。
結果、1人の味方も得られないと悟ったウィズは、ため息を1つつくと白旗を上げることにする。
ある意味規格外の目の前の少女の好奇心を、ほんの少し満たすくらいの情報なら渡しても問題ないだろうと判断したのだ。
「大陸の東の端にあるロドムという小国をご存知ですか?私はその国の出身で、現在、自国へと戻るために旅している途中です」
いつの間にか静まり返った空間に、耳に心地よく響く低めの滑らかな美声が流れた。
「その姿だと、これまでも随分長く旅していたみたいだけど、何をしていたの?見聞の旅?」
アメリアが小首を傾げ、さらなる疑問を口にした。
若い騎士の中には武者修行と称して無謀な旅に出る事もあると聞く。アメリアは、その類かと思ったのだ。
無邪気な問いに、ウィズから押し殺したような低い笑い声が漏れた。
「そんな大層なものではありません。魔術の事故で、強制転移させられたんです。座標が指定されていなかったため、跳ばした方もどこに行ったのか分からなくなってるでしょうね」
「まあ!大変だったのね。どこに飛ばされたの?」
アメリアの顔が気の毒そうに歪んだ。
未熟な者の魔術暴発ほど厄介なものはない。
自身も持て余すほどの魔力に恵まれたアメリアも、幼い頃は何度も魔力暴走を起こしかけ、周囲に多大な迷惑をかけてきた。
今回、神都を目指すのも、魔術大国でもある彼の国の学園に入学し、魔術の鍛錬を積むためである。
「…………リーン大陸に」
低く呟かれた言葉に、アメリアのものだけではない驚きの声が上がる。

