ピンチの時にさっそうと現れたヒーローは、見た目以外は高スペック男子でした。

 そこからは、まるでその人物の独壇場。

 くるりと刀を振った勢いのままに体を回し、返す手でもう1匹。
 他を襲っていた魔物達も、突如現れた人物が脅威だと判断したのか一斉に飛びかかっていくのだが、それすらも、男は苦もなく捌いていく。

 男の動きに黒いマントの裾が綺麗な弧を描き、白銀の刃の下で赤い花が咲いていく。
 それは、まるで美しい舞を見ているような、一切の無駄がない、優雅とすら感じる動きであった。

 深く被られたフードにより男の顔は見る事は叶わないが、わずかに覗く口元は軽く引き結ばれていた。
 コレで笑みでも浮かべて入れば、その圧倒的な強さゆえ、人ではない何かを疑ってしまうほど、その力の差は歴然であった。

 護衛達では刃をたてる事も叶わなかった熊型の魔物の黒い被毛すらも、男は斬り捨ててしまう。

 振り下ろされる鋭い爪をかいくぐり胴体へ一刀。
 抱きこもうと交差された腕から逃れ背後に回り、全力で持って心の臓あたりに剣を突き刺す。

 深く深く。

 魔物の胸から刃先が飛び出した。

 男は、あっさりと剣から手を離すと、素早く距離をとる。
 そして、足元に落ちていた護衛の剣をどうやったのか器用につま先で宙に蹴り上げ、その手に納めた。

 突然に与えられた痛みに怒り狂った巨大な魔物が、闇雲に両腕を振り回しながら突進してくる。

 しかし、地響きすら感じるその迫力も、男を怯ませる事は無かった。
 致命傷を受け思考能力の落ちている力任せの突進など、男にとっては脅威でもなんでも無かったのだろう。

 向かってくる魔物に相対するように男も走り出した。

 正面より近づいてくる敵を見据え、魔物はその爪の餌食にしてやろうと自分の半分ほどしかない存在に丸太のような腕を振り下ろした。

 しかし、その手は再び虚しく宙をきることとなる。

 目にも留まらぬスピードで振り下ろされたはずの凶器を、半身をそらすことで紙一重で避けた男の体は次の瞬間、高く宙へと飛び上がっていた。

 そして。

 魔物の首が空を飛び、体は数瞬の後、地響きを立てて崩れ落ちた。