ピンチの時にさっそうと現れたヒーローは、見た目以外は高スペック男子でした。

 幾人もの兵士が倒れ、いよいよ覚悟した時に飛び込んできた助けは、不思議な経歴の持ち主であった。
 嫌悪感を催すほどの醜悪な容姿。しかし、それに見合わない清廉な心と他の追随を許さない強さ。

「ロドムと言いう国を知っているか?」
 出身国だとあげた国を、まだその場に残っていた周囲に尋ねれば皆首を傾げた。

 その中で副官の男だけが、何かを思い出すようにしながら口を開く。

「…確か、山に囲まれた小国だったと思います。目立った特産物もなく、国交を結んでいる国もあまりなかったのではないでしょうか?ただ、独自の文化を持っていて、我々とは違う系統の魔術を操ると聞いた事があります」

 ゆっくりと小声でもたらされた情報に、ランバードは小さく頷く。

「険しい山に囲まれているため、あまり周囲との交流は取っていないが、誠実で真面目な国民性の国だ。一風(いっぷう)変わった身体強化を使い直刀の剣で戦う。昔一度だけ戦ったことがあるが、強かったぞ」

 十年ほど前。
 武者修行の旅の中でたまたま遭遇した、ロドム出身だという剣士との試合を思い出してランバードはつぶやいた。

「そいつは平民出身で魔力量が少ないから、身体強化は苦手だと言っていたが十分強かった。試合だから勝てたが、実戦ならおそらくやられていただろうな」

「ランバード隊長でもですか?」
 驚いたように目を丸くする部下に、ランバードは苦笑する。

「まだ若かったしな。今なら危なげなく勝てるだろうが、ウィズ殿には勝てる気がしない。つまりはそういう事だろう」

「……魔力量の多い強者。つまり、彼は貴族かその流れを汲むものという事ですか…」

「まぁ、推測でしかないがな。とにかく、力強い味方ができたと思っておこう」
 思案する副官に、ランバードは肩をすくめて話を切り上げる。

「我々も休もう。交代はいつも通りに。ウィズ殿は客人だから、交代要員には含まず休んでもらえ」
「「「はっ!」」」
 短く答える部下たちを満足そうに見やって、ランバードは腰をあげる。

(テントを貸し出すというのも、余計なお世話なのだろうな)

 一人でこの森の道なき道を旅してきた強者である。
 恐らくああしていても意識の半分は警戒しているのだろうし、これまでの夜もああして休息をとっていたのだろう。

 先ほどの体勢のままピクリとも動かないウィズを横目で見ながら、ランバードは自身の寝床へともぐりこんだのだった。