『─私の秘密?そうだなあ、まずは……遼琳麗は存在したけど、存在しないということ。私は私であって、私ではないということ。私は……』
3つめは正直、初めて聞いた時は信じられなかった。
彼女の願いを、何もかもを、踏み躙った。
嗚呼、だって、あの日、初めて……。
「─ね、意識ある?」
考え事をしていたら、声が飛んでくる。
お嬢様らしさなんてない、軽快な声。
「ん……」
「うん。ちょっと痛いと思うけど、応急処置するよ。私、諸事情があって帰れないから……んー、でも、処置道具とかは完璧に持ってきたから安心して……」
「っ、……」
「舌を噛まないように、布を噛んでてね」
─それからのことは、よく覚えていない。
痛みが強すぎたこともあるが、彼女曰く、使った薬草が意識が朦朧とするものだったから、とのこと。
目覚めたときは、最初に知らない天井が見えた。
「─起きたか」
驚くほどスッキリとした感覚に懐かしさを感じていると、そばには琉琉がいて。
「…………彼女は」
「今、食事を作ってくれているよ。ここはお前が襲われた場所からそう遠くない、わらわが急遽作った小屋じゃ」
小声で教えてくれる琉琉は、彼女と神狼が接触した姿を見て、先回りで準備してくれたそうだ。
「ひとまず、完治はさせていないが、動ける程度には治癒術をかけたぞ。どうじゃ?」
「ん……動ける」
「なら良い。─まったく、無茶をするでないぞ」
「すまん。後々のことを考えたら、こっちが都合よくて」
「じゃが、それで死んだら本末転倒じゃろうが」
「そうだな。……気を付けるよ」
既に琉琉と怜世の手配で、神狼を襲ったものたちの身柄は確保済であり、その黒幕なども現在、怜世が洗い始めてくれているらしい。
相変わらず、よく出来た乳兄弟で助かる。
「……それで、ここは?」
「隣国─蒼龍国の端、ちょうど我が国との境界に位置する森じゃ」
「普通に問題があるんじゃないか?不法侵入並びに、不法滞在になるだろう」
「そうじゃが、ちゃんと、こちら側の龍神には許可を得ておるぞ。龍神が許可をくだせば、こちらの王も否定など出来ぬ。そもそも、我が国に逆らうものなど」
「琉琉。─その考え方は危険だから」
神狼がそう言うと、琉琉はハッとした顔して、「すまぬ」と弱々しい声を発した。
─逆らわぬと油断した結果、仲良くしてくれていた隣国の王は死に、隣国はこちら側を蹂躙してきた過去がある。


