「─後悔しておるのか」
「……どれにだ」
「”最初から”じゃ」
「……馬鹿言え」
しかし、それは過去の話だ。
そして、呪いをかけられたのは、遥か昔。
「今は感謝しているよ」
出逢わなければ、とか、そんなことは考えられない。
彼女がいない世界など、真っ暗のままだ。
(君を救えないならば、この世界に意味は無い)
珀神狼は、何度か繰り返している。
─末の皇子として生まれ、反乱を起こし、皇帝となる。
その日々を繰り返し、繰り返し、そして、また繰り返す。
数え間違っていなければ、今の生は四回目だ。
何度も抗った。
母や仲間の死、今は亡き、先の皇帝や兄達が起こした戦の阻止……しかし、そのどれもがあるべきものとして、形を変えて襲いかかってきた。
きっと、変わらぬ運命というものは道筋としてある。
─けど、彼女は違った。
最初の人生で出会った、最愛の妻。
その妻との出逢いは、いつもバラバラだった。
そして、その妻の最期もいつもバラバラだった。
ある時は毒で死に、ある時は燃える建物の中で逃がされた、ある時は目の前から消えた。
琉琉曰く、彼女は『わらわも予想だにしてない、誰かの強き願いによって導かれた幸運』という。
─龍神すらも予想しない幸運。
それが、自分の元へ舞い降りてきてくれたと言うなら。
(……もっとも、今世では過去に出会った出来事の全ては終わってしまったから、幸運は三度で神狼の前から去ってしまったのかもしれない)
それなら、それで仕方がない─……簡単に諦めきれやしないが、それなら、彼女が望んだ平和な治世を作り、早めに有能なものへ託して、去るだけだ。
琉琉の希望も叶えられるし、別に良いだろう。
琉琉は不満げだったが、その幸運が何故巡ってきているのか、どこから巡ってきているのかわからないらしく、何も出来ない、珍しく無力な琉琉は頷くしか無かった。
「……本当、何度繰り返しても疲れるな」
何度も何度も何度も何度も繰り返す、世直し。
国を立て直すには一筋縄ではいかず、過去で失敗した、上手くいかなかったものは利用せず、様々、手法を変えて、この国の膿を出す日々。
昨夜も襲撃があり、神狼は寝不足である。
元々、不眠症なのだから、たまに眠れた夜に襲ってこないで欲しいのだが、襲撃にすぐに気づいて応戦できるということは、自分は熟睡出来ていないのだろう。
「寝るのか?」
目の前の仕事に集中出来なくなり、神狼が立ち上がると、琉琉がそばに寄ってくる。
「少し、散歩してくる。─そろそろ、そんな時期だ」
「ああ……ついて行こうか?」
「大丈夫。怪我はするけど、死なないから」
当たり前だが、国を作り直そうとしている珀神狼には、敵が多い。
しかし、珀神狼は追随を許さぬくらい、強かった。

