あなたを愛しているから




─悠龍国(ユウリュウ)。帝都・龍華町(リュウカ)にて。

「─おばちゃん、おはよ〜」

ひとりの少女、遼琳麗は走り回っていた。

「おはよう。琳は今日も元気だね」

「えへへっ、それが唯一の取り柄ですから!」

「よく言うよ、この子は。─ほら、席にお座り。すぐに食事を持ってくるからね」

優しく頭を撫でられ、琳麗は笑う。

「ありがと〜!」

─両親を亡くし、兄を失った遼琳麗。
元は名家だった遼家は見る影もなく、元々、薬師の家系だったことから、この龍華で医院にかかれない人を見るのが、今の琳麗の仕事だった。

琳麗の両親が亡くなったのは、今から数年前のこと。
その当時の皇帝陛下は遊興に耽り、政治を疎かにする愚王であった。多くの臣下は見限り、私欲を孕む官僚に利用されていた愚王。

後宮へかかる金額とは別途、多くの浪費を繰り返し、国を傾けていた皇帝陛下は美しい女性は必ず、自分のものとしていた。

そんな皇帝陛下に呼ばれ、皇命とあらば逆らえない中、母は父への想いを貫き、命を落とした。
そして、優秀な薬師で、皇宮に仕えていた父は皇帝お気に入りの妃のひとりに嵌められ、殺された。

両親の死によって、遼家は簡単に没落し、形だけの豪邸は琳麗の手で、医院へと生まれ変わる。

両親が亡くなった翌年、辺境で反乱が起きた。
末の皇子が、皇帝陛下を討つべく立ち上がったのだ。

末の皇子は皇帝陛下の気まぐれで手をつけられた女が産み落とした皇子で、幼い頃から優秀だったと聞いている。

それを気に入らなかった妃のひとりが皇帝陛下に強請り、辺境に追いやられたとかなんとか。

(どうでも良いと思っていたけど─……)

多くの兄皇子は、その末の皇子を始末しようとした。
しかし、それが叶わなかった。
それは反乱が起きる前から行われていたが、誰ひとりとして、彼を消すことはできなかった。
─そう、聞いたことがある。

そして、反乱からそう時間が経たず、反乱軍は帝都……つまり、龍華町へやってきた。
無駄な殺傷、略奪は行わず、皇帝陛下の暴政によって死にかけていた龍華町の人々は、その反乱軍によって生き延びた。

(今や、私たちが戴く皇帝陛下だ)

多くの国民の希望を得て、その反乱軍の長であった末の皇子─珀神狼(ハク シンロウ)が皇帝陛下となったのが、3年前。

この国は飢饉が続いていた。毎日、人が死んでいく。
それでも、上の人達は構わず、毎日、宴を繰り返す。

そうして、この国はどんどん弱っていき─……他国に蹂躙される目前で、反乱が起こった。